「トランス脂肪酸」を含む油脂類は健康被害が大きいとして全米で使用が禁止されることになったことは記憶に新しいと思います。
トランス脂肪酸の使用について、日本では摂取基準や規制は明確になっていませんが本当に健康に問題はないのか?
とても気になるところですよね。
そもそもトランス脂肪酸っていったい何?
反芻する動物には(牛や羊など)、胃内の微生物の作用によりトランス脂肪酸が含まれています。
その為肉類や乳製品には微量ではありますが、始めからトランス脂肪酸が含まれているということになります。
植物から油を抽出する過程で、臭いを除去する為に高温で熱処理を行うのですが、その際にトランス脂肪酸ができるため、精製された植物油(例えばサラダ油)にも少量のトランス脂肪酸が含まれています。
それから、常温で液状になっている植物性油脂を固体の油脂に加工製造する際(植物性脂肪→マーガリンなど)は水素を加えるのですが、その工程でトランス脂肪酸が生成されるのです。
つまり、トランス脂肪酸は後から食品に添加されるものではなく、元々生物そのものに含まれているか、加工工程で生成される脂肪酸なのです。
トランス脂肪酸を摂取することで考えられるメリット・リスク
トランス脂肪酸を摂取するメリットははっきり言ってありません。
ただし、常温で液状の油を固形にしたほうが扱いやすい食品(クリームやマーガリン、マヨネーズ)はあるので、食材を扱いやすくするために水素添加しているといったところです。
逆にデメリットは多く挙げられます。
血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増加して、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が減ってしまうことにより動脈硬化、心臓疾患を起こしやすいトランス脂肪酸ということが各種研究で報告されています。
慢性的トランス脂肪酸の過剰摂取を行ったところ、少ない場合と比較して心臓病のリスクを高めるという研究もあります。
免疫力の低下、アレルギー、アトピー性皮膚炎等を引き起こす可能性や、妊婦が摂取すると胎児への影響があるとも言われ、諸外国では制限するよう勧告されてきています。
ただし、この研究報告の多くはトランス脂肪酸を日常的に摂取する量が多い欧米人を対象とした研究であり、日本人の場合にも同様の影響があるのかどうかはまだ科学的根拠は明確ではありません。
また、前項で(そもそもトランス脂肪酸っていったい何?)示したように、トランス脂肪酸は天然に含まれるものと加工工程で生成されるものとあるのですが、健康被害の発症率に差異があるのかどうかの十分なエビデンス(証拠)がありません。
トランス脂肪酸を多く含む食品の例は?
マーガリン
ショートニング
マーガリンやショートニングを使用して作るパンやケーキ、クッキー、ビスケットなど加工品全般
マヨネーズ
アイスクリーム
サラダ油
ファーストフード店のフライドポテト
トランス脂肪酸は、発がん性があるとも言われていますが、日本人がどの程度摂取した際にどの程度の発症リスクがあるのかということまでは明確になっていません。
[ad#ad-1]対応策はどうすればいいか?
WHO(世界保健機構)は トランス脂肪酸の摂取量を、総摂取エネルギー量の1%未満とすれば問題ないとしています。
例を挙げてみましょう。
20代~30代女性の生活活動強度「ふつう」の人の場合、一日の推定必要摂取エネルギー量は約1900~2000 kcalですので1900~2000キロカロリー×1%=19~20キロカロリーとなります。
脂肪は1gあたり9キロカロリーなので、19~20キロカロリー÷9キロカロリーで考えると、一人一日当たり約2g程度までであれば問題はないであろうとされています。
ちなみにマーガリンを例に挙げると、マーガリン100g中にトランス脂肪酸は商品により多少違いはあるものの約1.5g程度含まれています。
つまりWHOの基準値が正しいのであれば、トランス脂肪酸2g程度・・・を考えた場合マーガリンを100g以上毎日摂取でもしない限り心配はないということになります。
しかし冒頭でもお伝えしたとおり、トランス脂肪酸を摂取するメリットはありませんし、アメリカではトランス脂肪酸の食品添加は安全でないとされ、2018年には使用が禁止される事実があるということは知っておいたほうがいいでしょう。
また、日本はトランス脂肪酸の表示義務が甘いため実際にどれぐらい含有されているか正確には分かりません。
お菓子やジャンクフードなど、子供が大好きなものばかりに多く含まれますが、できるだけ食べさせないように注意したいところです。
アメリカニューヨークで全面禁止にした成果とは?
冒頭でお伝えした通り、アメリカでは2018年までに加工食品へのトランス脂肪酸の使用が全面禁止するとしています。
それに先駆けて、既にニューヨークではレストラン店での使用を2007年に全面禁止していました。
その結果、ニューヨークでは心臓発作と脳卒中が禁止していない他地区に比べて少ないことが、イエール大学の医学部によりわかりました。
【比率は以下の通り】
・心臓発作:7.8%少ない
・脳卒中:3.6%少ない
JAMA(米国医師会雑誌)発表
これは、トランス脂肪酸による動脈硬化のリスクが少なくなった結果といえるかもしれません。
まとめ
人間はエネルギーを炭水化物や脂質、たんぱく質から摂っていますが、食事から摂取する脂質の量が多い場合には、トランス脂肪酸をとる量も必然的に多くなることが分かっています。
これは、脂質が悪いということではなく、それだけトランス脂肪酸のような悪い油が様々な食品に紛れ込んでいるということなのでしょう。
しかし、脂質は人間にとって非常に重要な栄養素であるので、脂質が悪いと言って油全てを減らすことは逆に栄養バランスが崩れ、健康被害の心配も生まれます。
単純に脂質を減らすということではなく、どんな脂質なのかを意識して良い脂質(オメガ3など)を摂取するようにすることが大切だと思います。
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