心療内科に受診することになった当日
2度目の救急車で運ばれた時の発作が後を引き、体調は最悪になっていた。
頭の異物感、違和感のような変な感覚、そして、耳鳴り、とにかく物音が気になる
彼女に運転をしてもらい、無言で助手席に座っている。
心療内科とはどんなとこなのか?言葉を失った人々が徘徊し、閉ざされた部屋の中からは奇声が聞こえてくるような異空間を想像し、息を呑んだ。
しかし、いざ着いてみると意外と普通の病院だった。
心療内科専門病院ではなく、他の科もあったため患者も学生ぐらいの人からおじいちゃんおばあちゃんまで、様々な人が受診に来ていた。
まずは、問診のためのアンケート用紙を渡された。しかし、頭の不調で考えることや、ペンを持つこともままならない私は、全ての記入を彼女にお願いした。
この行動に彼女はとても驚いていたようだった。
・・・私の彼氏は字も書けなくなってしまったの・・・?
そんな声が聞こえてきそうだった。いつの間にこんな状態になってしまったのだろう・・・
しかし、そんな自分にがっかりすることも、ショックを受けることもなかったのは、頭がぼーっとして、意識が薄く明確に自分の状態を認識できていなかったからかもしれない。
なんだか呼吸ができているだけでも奇跡的だ。頭の異常さえ治れば・・・心療内科で改善することなどできるのだろうか。
ふと、待合室の隅を見渡すと、患者とカウンセラーらしき先生が話をしていた。
たぶん精神病の患者のカウンセリングをしているのだろう。正直今の自分に必要なのはカウンセリングなどではない。人と話をしたいわけでも、悩みを聞いてもらいたいわけでもないからだ。
今の自分は耳鳴りや頭の異常で人と話すこともままならない。普通にカウンセリングと話せているだけで、大丈夫なんじゃないかと思いながらその光景を見ていた。
問診票は彼女に書いてもらっているが、症状の細かいことはわからない。
選択回答のところは、指を刺して書いてもらい、記述式のところは何とか書いてくれるように頼んだ。
しかし、時間をかけすぎたのか、選択回答のところだけを書き終わったところで、自分の名前が呼ばれた。
結局問診するのだから、適当でも問題ないのだろう。
そう思いながら、ソーシャルワーカーと呼ばれる先生と個室に入り。1対1での問診が始まった。
問診では最初に、失礼にあたることも聞くかもしれませんがよろしいですか?という説明があった。
宜しいも何も拒否したら診察できないんでしょ?というツッコミを心の中で思いながら、とにかく早くこの空間を抜け出したい。こんな質問意味が無いと思いながら聞かれる質問に、もうろうとしながら回答していった。
聞かれたことは、家族構成、親の名前、年齢、最終学歴、就職後に就いた会社、業種、症状がでたのはいつごろか?、具体的な症状は?など、それぞれに回答した内容によって、さらに突っ込んだ質問が来たりこなかったり・・・そんな感じだった。
この問診は、診察前のデータ収集のようだったので仕方ないのかもしれないが、症状に関する質問よりも、学校を卒業してから会社で働いている間のことを深く聞かれた。内心、そんな質問は何の役にも立たないだろう、とにかく早くい診察をして欲しいと思っていた。
約20分ぐらいだっただろうか、事前の問診が終わり、心療内科の先生による診察が始まった。心療内科ということもあり、とても穏やかで優しそうな印象の先生で一安心。
とにかく症状を言葉で形容するのが難しく、ロケット花火が・・・頭の中に何かが・・・などと客観的には訳の分からない説明をしていると、それを一生懸命に聞いてくれた。
すぐには先生は診断を出さず、数十分間程度、細かく説明を続けていると、先生が何も言わず一つの冊子を手渡してきた。
「これなんじゃないかと思います」
10数ページの簡単な冊子の表紙に書かれていた文字とは・・・
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